ギュスターヴ・モロー|世紀末の幻想的な世界を探求した画家

ギュスターヴモロー 芸術家紹介

ギュスターヴ・モローのプロフィール

名前 ギュスターヴ・モロー
国籍 フランス
生誕 1826
死没 1898(72歳)

ギュスターヴ・モローの生涯

モローは1826年、建築家の父と音楽家の母の間にパリで生まれました。生来身体が弱かった彼は、6歳の頃から素描をして遊んでいました。

1844年にエコル・デ・ボザールで教鞭を執る画家フランソワ=エドゥアール・ピコの弟子となり、46年にエコル・デ・ボザールに入学します。在学時の48年と49年にはフランスにおける芸術家の登竜門、ローマ賞(1968年廃止)に挑戦しますが、いずれも落選しています。その翌年に学校を去ってからは、独りで制作を行うようになりました。

56年、親交のあった画家テオドール・シャセリオーが亡くなったショックで一時期引き籠っていましたが、両親の薦めもあり、1857年、モローはローマへの私費留学を始めました。59年に帰国するまでに、モローはローマ、フィレンツェ、ミラノ、ピサ、シエナ、ナポリ、ヴェネツィアを訪れ、ティツィアーノやレオナルド・ダ=ヴィンチ、ミケランジェロなどの巨匠の作品を模写しています。

帰国後、ドゥカズヴィルのノートル・ダム大聖堂への作品を制作して以降は、モローは徐々にイタリア留学で学んだものを、自己の絵画様式に反映させるようになります。サロンでメダルを獲得することになる1864年の《オイディプスとスフィンクス》は、イタリア留学の成果の結実であると言えるでしょう。

《オイディプスとスフィンクス》(出典:Wikipedia)

70年代は作風のマンネリ化に悩みますが、1876年に発表した、新約聖書を主題とする「サロメ」のシリーズは、晩年のモローの作品の方向性を決定づける画期的なものとなりました。彼の描くサロメは、当時のヨーロッパにおける「ファム・ファタル(運命の女)」のイメージを固定化し、後にオスカー・ワイルドが戯曲制作においてモローの描くサロメのイメージを受容しています。

《ヘロデ王の前で踊るサロメ》(出典:Wikipedia)

1888年に美術アカデミー会員にえらばれ、92年にはエコル・デ・ボザールの教授となりました。彼は弟子たちの個性を尊重し、その才能を自由に伸ばすというスタンスで教鞭を執っており、アカデミーの伝統を重視する他の会員からは疎まれていたようです。彼の下からはアンリ・マティスとジョルジュ・ルオーという二人の巨匠が生まれていますが、彼らのようなモローの庇護下にあった生徒はモローの死後に学校を追放されています。

モローは制作に向かう態度の相違から次第にサロンから遠ざかりましたが、精力的に制作をつづけ、画廊やパリ万博で注目を集めていました。1898年に死去したとき、生前のアトリエには油彩画約800点、水彩画575点、デッサン約7000点が残っていたとされます。このアトリエは現在「ギュスターヴ・モロー美術館」として公開されています。

ギュスターヴ・モローの作風

モローは芸術アカデミーの規範に従う従来のアカデミズムに反発するような独自の画風を確立しています。その画風は象徴主義の代表格とされ、19世紀末のいわゆる「世紀末」の文学や芸術に大きな影響を与えました。作家のユイスマンスは小説『さかしま』のなかでモローを高く評価しています。

※フランスにおける美術アカデミズムは、17世紀のフランスの画家ニコラ・プッサン及びフランドルの画家ルーベンスのいずれかを手本とする、という伝統の下で芸術アカデミー(Académie des Beau-Arts)での教育と、芸術の知的・教養的要素に重きを置いていました。その特徴は、滑らかな画面と、歴史画や神話画を上位格とするという美術の格付などが挙げられます。

例:アレクサンドル・カバネル《ヴィーナスの誕生》(出典:Wikipedia)

ギュスターヴ・モローの作品

自然主義が支配的であったフランス画壇に対抗するかのように、モローは聖書や神話を主題とする絵画を多く制作していました。特に新約聖書に登場する女性「サロメ」を主題とした絵画群は、彼のイメージであるとともに、ファム・ファタルのイメージともなっています。

出現

出典:Wikipedia

ユダヤの王ヘロデとその後妻へロディアの娘サロメがヘロデ王の前で踊り、その褒美として、へロディアに唆されたサロメが洗礼者聖ヨハネの首を求めるという場面に基づく作品です。聖書に基づきつつ、彼独自の解釈と非常に象徴的で幻想的に場面を構成しているのが大きな特徴といえます。1876年のサロンに出品され、賛否両論を巻き起こしました。

一角獣

出典:MUSEY

人間の処女にのみ懐くという生態から、キリスト教における貞潔やイエスにも喩えられる幻獣・一角獣(ユニコーン)を描いた作品です。「貴婦人と一角獣」というタペストリーに触発され、先ほどとは打って変わって明るく幻想的な色調のなかに、中世の装飾モチーフとルネッサンス期のモチーフを織り込んでおり、何とも不思議な空間の広がりが見えます。

ギュスターヴ・モローの関連書籍

ギュスターヴ・モロー 世紀末パリの異郷幻想

19世紀末のパリで活躍した象徴主義の画家ギュスターヴ・モロー(1826-98)は、聖書や神話に材を取りながら、宗教画の枠におさまらない豊かな着想で数々の作品を描きました。
本書では、モローの代表的な作品を画題ごとに厳選。美麗な図版で「異郷幻想」の世界へご案内します。

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ギュスターヴ・モロー画集(世界の名画シリーズ)

本書はギュスターヴ・モローの代表作を解説付きで収録した美術全集です。

出典:Amazon

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